(36)  夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
     雲のいづこに 月宿るらむ 
             (清原深養父)

(歌意) 短い夏の夜は、
     宵の口と思っているうちに
     開けてしまったけれど
     いったい雲のどの辺りに
     月は隠れて留まっているのだろうか。

 Too short the lovely summer night,
 Too soon ’tis passed away;
 I watched to see behind which cloud
 The moon would chance to stay,
 And here’s the dawn of day!   
      FUKAYABU KIYOHARA  

清原深養父は清少納言の曽祖父で、純情で内気な性格だったそうです。平安時代の貴族は、月を眺めて夜を過ごすことが多かったようで、いい月だなあと思ってるうちに夜が明けてしまったと、夏の短い夜を惜しんでいる歌です。  



(37)  白露に 風の吹きしく 秋の野は
    つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
             (文屋朝廉)

 (歌意)草の上に光る白露に
     風が吹き付ける秋の野では
     糸を通していない真珠の玉が
     散っていくようだなあ。

  This lovely morn the dewdrops flash
  Like diamonds on the grass—
  A blaze of sparkling jewels! But
  The autumn wind, alas!
  Scatters them as I pass.   
         ASAYASU FUNYA

露の透明感は表現できてると思いますが、躍動感に欠けてます。これは、風が吹いて飛び散る寸前であって、それが吹き飛ばされる情景を、紐に通されていた水晶玉の糸が切れて散らばっていく様子をダブらせて想像してみてください。


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